日本の大学の多くは、レジャーランドと思っている中高年は多いのでは。が、大学倒産時代を迎え自己変革を迫られる大学と、それに学生も順応していっている。若者の意識と行動を理解できないカイシャは、折角採用した若者にすぐに辞められてしまう、という事になる。
本書は、激変する大学事情を「教える側」の視点で語っている。変貌する大学の一端を、以下、ご紹介。
大学倒産時代に備えてふつうの大学が出来ることは「教育」しかない、とか。危機乗り切りとは①研究。ips細胞のような世界的な研究業績をあげ、研究資金など潤沢なお金を得る。これは
理工系、医学系など自然科学系学部を抱えている国公立大が主。
②産官学連携。企業と連携し、商品開発や寄付講座を作ったりなども、自然科学系大学がメイン。
③教育よりない、と多くの大学では、ここに力を入れることになる。今や、高校並みに課題(宿題)が出されるのが普通に。
大学の教育方針がはっきりしてきた。アドミッションポリシー:どういう基準で学生を入学させるかを規定。カリキュラムポリシー:どういう人材を育成するのか、どういう能力を身につけさせるのか、そのためにどういう科目をどれくらいの時間数を教えるのかなどカリキュラムの基本的な考え方を決めたもの。
シラバス:授業計画。授業の目標、授業の進め方、到達目標、授業時間外で必要とされる学習、授業で使用するテキスト、成績評価の基準、半期15回の講義の細かな内容を提示。1990年代後半から本格化。
シラバスのすごさは、成績評価がまずはっきりとすること。学生と先生の力関係が不透明で不平等なのは、成績評価が曖昧だから。シラバスの成績基準をより具体的に書くこと、同様に、15回の授業をどう進めるか具体的にかくことが教師の側に認められる。
学生から、シラバスに照らして異議申し立てを受ける可能性がある。また両者の力関係を変えたのは「授業評価」。授業が分かり易かったか、先生がシラバス通りに進めたか、板書は綺麗だったか?!…いくつかの項目で点数評価される。授業評価は教員側にもフィードバックされる。
「卒業後アンケート調査」というものもある。進路先や大学での教育について聞くもの。
在学中に身に着けさせる資質や能力に照らして、教育成果、効果があがっているかどうか。公表し、調査結果を教育に活かそうとする。
学業成績の可視化に力を入れる。学位証書、成績証明書を補足する資料を作る。プレゼン能力、読解能力、英語力などをグラフ化する。能力評価、大学入学後にどれだけ学力が伸びたかについて、「外部委託」して様々なテストを実施。教授会の後などにテスト実施業者がやってきて、学生の成績を解説する研修会なども
行われている。
入試制度の多様化により入学者多様化=中高の附属校から進学の学生、AO入試、帰国子女枠、スポーツ推薦、指定校推薦、公募制推薦。その後に一般入試が前期・中期・後期とある。
このよに様々な試みを進めてきている大学人の目からすると企業は、キチンと人材や能力を評価するという座標軸をもっているのだろうか?1回の面接で評価されたり、履歴書の表面で判断されることに、学生たちは納得いかない=すぐ離職という行動をとってしまうのでは? という事らしい。
(P160~177から)
『なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか?』 扶桑社新書 の構成
はじめに 間もなく、若者に逆襲される日本企業の皆さんへ
第一章 本格化する若者激減時代
第二章 甘い経営者と中高年管理職の認識
第三章 若者は弱いか?
第四章 日本を衰退させる若者の仕事観
第五章 日本を再浮上させる若者の仕事観
第六章 若者はなぜ「成長」したがるのか?
第七章 もはや小中高と大差ない大学
第八章 若者を有効活用できている企業がやっていること
第九章 今の若者に欠けているもの
おわりに 日本企業は大学より遅れている?
中野雅至講師のプロフィール
1964年奈良県大和郡山市生まれ。
88年同志社大学文学部英文学科卒。
89年大和郡山市役所職員を経て90年労働省(現・ 厚生労働省)入省。
98年厚生省生活衛生局指導課課長補佐、
2000年新潟県総合政策部情報政策課長、
03年厚生労働省大臣官房国際課課長補佐を歴任。
04年兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、
10年同大学院教授を経て
14年4月より神戸学院大学現代社会学部教授となり現在に到る。
テレビ出演、著書多数。
【近著】
『テレビコメンテーター~「批判だけするエラい人」の正体』 中公新書ラクレ (中央公論新社)23/02『なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか?』 扶桑社新書
(育鵬社)21/09
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