矢部輝夫(やべ てるお)講師は、 鉄道整備株式会社(現・JR東日本テクノハートTESSEI)取締役経営企画部長時代に、従業員の定着率も低く、事故やクレームも多かった新幹線清掃会社に「トータルサービス」の考えを定着させ、最強の「おもてなし集団」に変革させた。同社専務取締役、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI おもてなし創造部長を経て、2015年合同会社「おもてなし創造カンパニー」を設立し同代表に。現在、講演、著作にと活躍中。その取組みはハーバード大学、スタンフォード大学で講義されるなど国内外から注目されている。

矢部先生は今年取り組みたい演題を次の様に語る。~~~

新年からは、「新幹線清掃チームの・・・」等を主題にしながらも、ご依頼のみなさまのさまざまなご要望に応じて、以下のようなテーマを組み合わせ、重点的に取り上げお話したいと考えております。もちろん、TESSEIだけではなく、JR東日本、さらに他会社の実例をできるだけ紹介しながら実践的なお話としていく所存です。なお、以下の副題をそのままダイレクトに使うわけにはいかない場合があり、ご相談の上決定していきたいと思います。~~~~~

(経営全般)

・仕事、楽しいのかな?

  スタッフ自身が仕事を楽しめなければお客さまを楽しませることはできないはず・・・どうすれば仕事を楽しむことができるのか。そしてそれを突き詰めてこそ、離職率、人材不足、マンネリ化などを含めた経営上の課題を解決することができるはず・・・

・効果のないことを繰り返しても時間の無駄!

  「何度も何度も繰り返し徹底しなくてはならない」などと言って効果のないことを繰り返しているケースが極めて多い。そのことに早く気付き、新しい方策を次々と繰り出していったのがTESSEI。何を変えていったのか…

・「嫌なにおいは元から絶たなきゃダメ」

  スタッフが「やる気がない」「問題意識がない」などといった課題を解決する場合、上っ面の現象だけを見ていては解決には程遠い・・・そういった現象には必ず「おおもとの要因」がある。「嫌なにおいは元から絶たなきゃダメ」というコマーシャルのキャッチコピーは、名言であることを肝に銘じて…

・「デザイン思考」で会社は変わる?

  デザイナーのように物事を捉え実践していくことが今いわれている。TESSEIのストーリーは、まさに「デザイン思考」によって組み立てられている。それは、どのようなものだったのか・・・

・「高齢化」もっとポジティブに!

  少子高齢化の時代といわれる。その中で特に高齢化はネガティブに捉えられている。果たしてそうなのか?60歳を過ぎると定年退職という解雇によって職を失う。でも、人生100年時代の中で、その後の40年をどう生きようというのか。元気が良く豊富な経験を備えた人々は、古く言われた金の卵と比肩する「銀の卵」のはず。TESSEIの変革はそうしたアクティブシニアの挑戦によってなしとげられた・・・

・ブランド力を高めるための「仕事の捉え方」

  社のブランド力とは何か。そしてそのブランド力を高めるのは「人」であり、それをどう活かしていくのか。「人」の実践の仕方でブランドの価値が左右されるのであり、「人」をその気にさせるマネジメントへのアプローチは・・・

・私たちの仕事ってなんだろう?

   TESSEIでは「私たちの仕事はお掃除」とみんなが思い込んでいた。でもその思い込みが「仕事の楽しさ」を得るため、「変革」するための行動にブレーキをかけていた。自分たちの仕事の「再定義」をすることによって、今までのやり方とはまったく違った世界が広がっていくはず・・・

・ONE TEAMを創る?

   ONE TEAMとは単に「一丸となって目的を達成するチーム」と表現する多くの人たちがいる。でもそれだけではどのようにONE TEAMを創り上げていくかは雲をつかむような話。ONE TEAMって「多様性」と「集合知」の世界であり、それを現実的な方法でコラボレートしたのがTeam TESSEI・・・

・ONE TEAMを創るキーマン(リーダー)の大切さ

   チームには多くの「人」が存在する。そしてその人たちはさまざまな見方・考えを持っているはず。それらの見方・考え(多様性)を大切にしていくことが会社のさまざまな挑戦に不可欠だが、それだけでは烏合の衆になりかねない。そこで、大切なのが「リーダー(仕切る人)であり、「集合知」はリーダーによってつくられていく・・・TESSEIはこれを重視し変革をなしえた・・・

・ミッション・コマンド

   ミッション・コマンドとは「トップが作戦の大方針を決定し、現実に即応したやり方は現場のリーダーに任せる」こと。なぜなら、トップは刻々と変化する現場の状況をリアルタイムに把握できない立場にあるから。TESSEIはこの方法を模索し成功したが、その成功の要因は、リーダーとリーダーをさまざまな見方・考えで支える人たちを育ててきたから・・・

・「The・中間管理職」をどう変える?

   社長と現場のスタッフ以外は中間管理職と呼ばれる人たち。その人たちが「上と下との板挟みで大変だ」「単なる伝達係なんだよな」とぼやいている現実。これは本人にとっても会社にとってもとても不幸な状態。こうした「The・中間管理職」と呼ばれる人たちを覚醒するためのキーワードは、彼らは「部下であり、上司である」ということ。TESSEIがこうした人たちを覚醒するためにトライしたことは・・・

・一握りの「宝」といえる人たちが会社を変える!

   「すべてのスタッフをモチベーションの高い、やる気のある人材としていく」と考えている人たちが意外と多い。でもそんなことは不可能なのでは。人材育成において「みんなを・・・」という教育者視点ではなく、経営者視点で考えたのがTESSEI。会社を変えることができるのは「一握りのスタッフ」であり、そうした「宝」を掘り当てるためにTESSEIがトライしたこと・・・


 

・マンネリ化を打破する

   マンネリを単に「同じことを繰り返すこと」と定義したら、良いマンネリと悪いマンネリがあるはず。問題とすべきは悪いマンネリ。悪いマンネリとは、現状に満足し停滞した状況にあること。「目標というのは、作った翌日からマンネリに変わる」という言葉がある。目先の目標よりも、今日よりも明日、明日よりも明後日と変わりつづけようとする会社にするためにとったTESSEIの方法とは・・・

・「ホーソーン効果」で「人」は動く

  「人」は認められること、見られることによって意外な力を発揮するということが「ホーソーン効果」「ピグマリオン効果」として実証されている。多くの会社は「ルール・マニュアルを決める」「最新の人材管理システムをつくる」、そうすれば「スタッフはチャンと仕事をしてくれる」という思い込みを持っているのでは・・・もちろん、それらも大事だが、どのように「人」を見ていくかということを考えていったのがTESSEI・・・

・「多様性」ってなんだろう?

  多様性を求めるキーワードが「女性、高齢者、外国人」となっていないか。そうであればそれは、性別、年齢、人種の面での多様性に過ぎないのでは・・・会社が求める多様性は「見方・考え方」の多様性であり、それは、今いるスタッフもチャンと持ち合わせている。「多様性」はつくるのではなく、「今ある多様性を活かす会社」とすることなのでは・・・

・「Communication」は「伝達」という意味だけではない

  「Communicationを高める」と人は言う。その際、One on Oneで対話するなどといった方法論だけがまかり通っているが、いくらさまざまな方法を駆使しても、両者の間に信頼関係がなかったら徒労に終わってしまうのでは・・・Comは「一緒に」という意味、municaはラテン語で「分かち合う」という意味があるという。であれば、Communicationは「それぞれの想いを共有」することにあるのでは・・・Communication という行為は、それ単独で意味をなすものではなく、Psychological Safety、

Engagementなどといった「安心・信頼・絆」の上に成り立つということでは・・・

(安全)

基本的には上記の経営の項目と同じですが、特に次の項目。

・みんなでつくる安全とおもてなし

  「安全」というと、特別な分野と考えている方が多いがこれは間違いで、同じ組織の中で行われる経営活動の一つ。ということは前述したようなマネジメント、組織づくりによって達成されるものだが、それをきちんとやれる会社組織は、おもてなしにしても、すべての経営活動で成功を収めることができるはず・・・

Resilience Engineering

  「ルール・マニュアルをきちんと守る」、これが今までの安全の基本。でもこれだけでは限界があることが露呈。近年は、「ルール・マニュアル・・・」も大切だが、さまざまな事象にしなやかに対応していく人間の能力を伸ばしていこうというResilience Engineeringが主流になりつつある。これを安全でなく、経営活動全般に活用したのがTESSEI・・・

・「ヒヤリハット」は成功事例

  ヒヤリハットは大きな事故の芽を事前に摘み取っていくためにも不可欠なデータに満ちている。でも「ヒヤリハットを報告すると怒られるかも」「ヒヤリハットを報告しても会社は何も反応してくれない」などといった理由で報告データは極めて少なくなる傾向。そこで、TESSEIがとったのは、「ヒヤリハットは成功事例」「ヒヤリハットを経験したら自ら対策を実践する」などといった方策。これによって会社とスタッフの一体感を醸成・・・

・「一人で守る」から「みんなで守る」へ

  「ルール・マニュアルをなかなか守れない」という場合、えてして「人」の資質、能力にしてしまう傾向にある。TESSEIがトライしたのは、「ルール・マニュアルをなかなか・・・」という場合、必ず「守れないおおもとの要因」があり、まずそれを探し出すこと。また、「一人で守れない」なら「みんなで守りあおう」というしくみづくりを行ったことなどなど、同じことを漫然と繰り返すのではなく、新たな方策に次から次へとトライしていったこと・・・


 


   

矢部 輝夫 氏 (やべ てるお)のプロフィール                               

[合同会社おもてなし創造カンパニー代表]

1947年 宮崎県生まれ。
1966年 日本国有鉄道入社。以後、電車や乗客の安全対策を専門として40年勤務し、 安全対策部課長代理、輸送課長、立川駅長、運輸部長、指令部長の職を歴任。
2005年 鉄道整備株式会社(現・JR東日本テクノハートTESSEI)取締役経営企画部長に就任。 従業員の定着率も低く、事故やクレームも多かった新幹線の清掃会社に「トータルサービス」の考えを定着させ、おもてなし集団へと変革。
2011年 専務取締役に就任。
2013年 専務取締役を退任、おもてなし創造部長(嘱託)。
2015年 その後、おもてなし創造部顧問を経て退職。
     合同会社「おもてなし創造カンパニー」を設立し代表となる。(~現在) 


【受賞】2009年東日本旅客鉄道株式会社の安全の語り部(経験の伝承者)を務め、この間の取組みと実績に対し、経済産業省「おもてなし経営企業選」、企業情報化協会(IT協会)「サービス・ホスピタリティ・アワード特別賞」を受賞したほか、2016年9月より、ハーバード・ビジネススクールが、矢部氏の活躍とTESSEIのケースをMBA1年生の必修科目、更にリーダーシップ、技術マネジメントコースの授業で採用。

【著書】

『まんが ハーバードが絶賛した~新幹線清掃チームのやる気革命』 久間月慧太郎まんが(宝島社)17/05

『リーダーは夢を語りなさい~新幹線清掃会社「TESSEIの奇跡」が起きるまで』 PHPビジネス新書(PHP研究所)15/07

『奇跡の職場~新幹線清掃チームの“働く誇り”』                      (あさ出版)13/12

㈱経発、担当・大森までご連絡ください。
TEL06-6939-1297 FAX06-6939-1296
E-mail:koushi@keihatsu.co.jp

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